山の上

だいたい自分のために書いてる

マイアミのメモ

 学校にキャリーケースを引いていった。授業が終わって、そのままニューヨーク市内から一番近い、ラガーディア空港に向かうと、あまり人の多くない空港で親切なスタッフの人が案内をしてくれて、無事にチェックインを終わらせることができた。ニューヨークを発ったのは夕方で、マンハッタンの灯りがフライトの緊張を鎮めてくれた。4時間ほどの機内では、今では誰が隣に座っていたか覚えていない。少し眠った。

 

 初めてのマイアミ。そして初めてのリゾート地だった。ダウンがいらないどころではなく、Tシャツで過ごせる気温。日本を思い出させる湿度の高さに、呼吸が若干苦しくなった。電車が通っていないからUberを捕まえるか迷っていたけれど、乗り気な運転手が話しかけてきたので、これもいいかと思ってタクシーを使うことにした。貧乏旅行でタクシーの利用は稀なものだから、贅沢な気持ちだった。

 

 

 運転手はビジネスかノーマルなのかわからないけれどアロハシャツだった。おそらくメキシコ系のような風貌だった。マイアミの国際空港からマイアミのビーチまで、だいたい20分もある。

 

道路はそれなりに混んでいるけれど、一つ一つのホテルが滑らかな楕円のフォームをして、ネオンライトで縁どられていて、とても見応えがあるのだ。私は建物の美しいホテルを高速道路から見るのが日頃好きだったので夢中になって窓の外を見つめた。

 

 

 ふと、運転手がマイアミは星が綺麗なんだと教えてくれた。マイアミは街灯が多いのに見えるの?と聞くと、ああ見えるよ、といった。ここは、私が今まで訪れた場所の中でもっとも南半球に近い場所だった。東京では見られない星が見えたとして、それはきっとマイアミで成し遂げたことでもっとも価値あることの一つになりそうな予感がした。

 

 

 私は外国で夜にしっかりと空を見上げたことがない。空を見上げるのが怖いのだ。特にアメリカでは遮るものがない。電柱がないから、電線もない。一つ、二つ、邪魔なレイヤーがないと、私はまっさらな空間に一つの膜もなく無防備な形で放り投げられているような気持ちになる。足のつかないような深い海に入っているときの気持ち。多分そんな感じだった。