山の上

だいたい自分のために書いてる

タイトル未定(ニューヨークの旅)その2

 ピザ一枚2ドル。勢い余って二枚注文したら、口の中が荒れた。後々喉が乾くのは知っていたので、飲料はカバンに入れておいた。メキシコ人3人で店を回している。全員、感じのいい振る舞いをしている。コロナウイルスの流行を経て数々の店舗が潰れる中、このピザ屋はむしろ派手さを増して、以前あった素朴な印象は一切ない。70年代のアメリカ郊外を思わせるような店内はLEDでギラギラとして、メニューの文字には蛍光色のポップがついた。メニューも増えている。前の店主はどこに行ったのだろう。ともかく、ピザの味は美味しくなっていた。

 

 メキシコ人街と中華街の狭間が、自分の住んでいる場所。マンハッタンの喧騒から逃れ、チェーン店が一切進出していない、ある意味で煙たがられている、手の出しづらい街。私が住むアパートは、一切の書類が無くとも1ヶ月につき500ドルから650ドル払えば住むことができるから、身元の怪しい人々が暮らしている。2019年にもこのアパートで部屋を借りていた。早朝に共用スペースであるキッチンから怒鳴り声が聞こえて恐怖したこともある。しかし、これはご愛嬌だろう。それがここの日常だ。

 

 

 電車に乗り込む。一応、快速。発車してからスピードが出るまでが遅く、時々止まる。ゴミだらけの線路と、壁のグラフィティを眺めて、ここの景色だなあとしみじみする。複数の車線があるこの線路の中心にまでゴミを投げ込むのは大変だろう。それに、その線路を普通に走るこの電車はどうなっているんだ。

隣駅について、そこからは快速らしい日本のJR線にも負けない速さで真っ暗のトンネルを走る。雪が降ってきたが、見えなくなった。

 

 

 

 

続く