山の上

だいたい自分のために書いてる

 例の区域は街の時空なのか、何かが破綻していた。廃墟のように、人が建物を捨てたならまだ整理がつくが、場所も建物も街も捨てられてはいない。

 

全ては放射能によって人の立ち入りが制限されている。街のステータス(生きている/死んでいる)は放射能によって破綻され、第3のステータスを生み出しているように見えた。生きているのに死んでいる。ホルマリン漬けみたいな景色。

 

 区域の全域は生きている気配があるのに閉ざされている。8月の猛暑、湿気、コンクリ熱が自分を襲う。誰も管理しない雑草は道路にはみ出ている。

 

アパートのカーテンは閉まっている。内側からジメジメした闇がうっすらと見えると、ぞっとした。あの家には人が住んでいるんじゃないかと思う。ここはまだ宿泊が許されていない街なのだと言い聞かせても、あまりに建物の綺麗さに見慣れていて、あまり頭が納得していない。

 

車が放置されている。乗用車から軽トラック、時々工事用の車が投げ出されている。わたしはそれらを見て人の行き来について考える。

 

ここには場所があって車の走る道もある。

 

ただ、道は必ずしも到着したい場所に着くものではないのだと。ある場所に入ることはまだ許されないことには、道の意味はわたしの思っている道の定義とは違うんじゃないかと感じられた。